その「15万円の噂」、本当に正しい情報ですか?
最近、X(旧Twitter)やYouTubeなどを中心に、「中国人には15万円も支給されているのに、日本人はたったの3万円しかもらえない」という投稿が急拡散しています。
中には、「日本人より外国人が優遇されている」「日本の制度はおかしい」といった不満の声もあり、コメント欄では激しい議論が交わされています。
しかし、その情報は本当に正確なのでしょうか?
感情的な反応の前に、まずは制度の仕組みや支給の条件をしっかりと確認することが大切です。
この記事では、SNS上で話題となった「外国人15万円・日本人3万円」説について、制度の目的・仕組み・実際の支給状況などを細かく掘り下げながら、真相をわかりやすく解説していきます。
物価高騰対策給付金ってなに?目的と支給対象の基本を解説
この制度は、正式には「物価高騰対応重点支援給付金」と呼ばれており、令和6年度に新たに設けられた生活支援策です。
目的は、急激な物価上昇によって家計が圧迫されている低所得世帯を支援することです。
対象となるのは、「住民税非課税世帯」です。
この「住民税非課税」とは、年収や家族構成などに応じて一定の収入を下回る世帯に対し、住民税の負担が免除される制度です。
給付内容は以下の通り整理できます。
給付内容 | 金額 |
---|---|
基本給付 | 1世帯につき 3万円 |
加算給付(18歳以下の子ども) | 子ども1人につき 2万円 |
たとえば、住民税非課税で子どもが2人いる世帯なら、3万円+2万円×2=7万円が支給されます。
支給にあたっては、12月13日時点で日本国内の市区町村に住民登録があることが必要です。
ただし、課税者の扶養に入っている非課税者だけの世帯や、税条約などにより住民税が免除されている外国籍者がいる世帯は対象外となります。
「中国人に15万円、日本人は3万円」の噂は本当?デマの背景を探る
SNS上では、「在日中国人が日本に1年住んだだけで15万円ももらえた」との発言が拡散しました。
一部の投稿では、実際の給付通知のような画像や、受け取ったと主張する動画まで添付され、真実味を帯びて見えてしまいます。
しかし、これは誤解を招く表現であり、事実ではありません。
なぜなら、「給付金は国籍ではなく、世帯の条件によって支給額が変わる」からです。
たとえば、非課税世帯で子どもが3人いるケースでは、最大で9万円(3万円+2万円×3人)が支給されます。
さらに、別の給付金や支援金(就学援助、ひとり親家庭支援金など)を同時期に受け取った場合、トータルで15万円を超えることはあります。
つまり、「15万円もらった=優遇されている」という構図は成り立ちません。
その額には複数の給付金が合算されており、「物価高騰対策給付金」単体での額ではないのです。
給付条件の詳細:誰がもらえて、誰が対象外なのか
支給対象となるためには、以下の2つの条件を満たしている必要があります。
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世帯全員が住民税非課税であること
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自治体に住民票があること(2024年12月13日時点)
この制度は、「生活の苦しい世帯」を広く支援することを目的としており、国籍による差別的な線引きは行われていません。
実際、外国人でも住民登録をしていて、住民税が非課税であれば給付を受けることができます。
逆に、日本国籍であっても課税されている世帯や要件を満たしていない場合は給付対象になりません。
世帯条件 | 支給額(例) |
---|---|
非課税のみ | 3万円 |
非課税+子1人 | 5万円 |
非課税+子2人 | 7万円 |
非課税+子3人 | 9万円 |
つまり、支給される金額の差は、「世帯の構成」によって決まっているということです。
なぜこうしたデマが広がるのか?不安と誤解の温床をひも解く
こうした誤情報が急速に広まる背景には、次のような社会的要因が絡んでいます。
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情報の断片化:SNSでは一部だけ切り取られた情報が誤解を招く
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制度の複雑さ:支援制度が多数あり、内容が混同されやすい
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外国人に対する不信感や偏見:感情的な反応が先走りやすい
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事実確認の不足:信頼性の低い情報をうのみにして拡散してしまう
とくに支援金制度は、市区町村ごとに微妙に条件が異なることもあり、誤解を招きやすい構造になっています。
また、SNS上で「誰がいくらもらった」という個別事例がバズると、それが制度の全体像であるかのように誤認されやすいのです。
正しい理解で、支援制度の公平性を守ろう
物価高騰対策給付金は、生活に困っている人を支えるための仕組みです。
その本来の趣旨を理解し、公平性を守ることが、今の社会に求められています。
この制度において、「外国人だから多くもらえる」「日本人は冷遇されている」といった考え方は、事実に基づかない誤解です。
むしろ、支援が本当に必要な人たちが制度を利用できるようにするためにも、誤情報の拡散は防がなくてはいけません。
正しい情報を知ることが、冷静な判断につながります。
自治体の公式発表や政府の広報など、信頼性のある情報源を参考にしましょう。
まとめ:真実を知れば、見方が変わる
「中国人に15万円、日本人に3万円」という話は、誤解と誇張から生まれた誤情報でした。
実際の給付制度では、国籍ではなく所得や世帯構成に応じて金額が決まっています。
確かに制度は複雑で、知らないと誤解しやすい部分もあります。
でも、だからこそ、SNSで見かけた情報はそのまま信じるのではなく、正確な情報源で確認する姿勢が大切です。
不安や不満が広がる時代だからこそ、情報を見極める力を養い、必要な人が適切な支援を受けられる社会を目指しましょう。